【不動産物件の更新料】の解説
みなさんは、マンションやアパートを借りていて、「更新料」を請求されたことがありますか? 更新料がどのようなものなのか、ハッキリとはわからないまま支払っている方も多いのではないでしょうか?
実際に相談される内容では、例えば、「更新時期が12月だけど、転勤や卒業で3月には引っ越す予定です。更新時期の後に数か月しか住まないのに、更新料を全額請求されています。これって、全額を支払わないとダメなんでしょうか?」というようなものが多いですね。
更新して、その後に2年間か、3年間も住むのなら、納得できるかもしれませんが、数か月で退去するんですから、なんだか納得しにくいところですね。
今回は、この「更新料」について考えてみましょう。
1 「更新料」とはどのようなものですか?
最高裁判所の【平成23年7月15日の判決】(以下では「23年最判」と略します。)によれば、
「更新料は、期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃借人と賃貸人との間で授受される金員である。」
と定義されています。
2「更新料」はどのような性質のものなのでしょうか?
23年最判によれば、
「更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有する」
とされています。
3「更新料」は必ず支払わなければならないものなのでしょうか?
更新料の支払義務が法律に規定されているわけではありません。そのため、判例は、賃貸借契約書に更新料の支払が記載されていない場合(更新料を支払うという約束が無い場合)には、更新料を支払う必要はない、とする傾向にあります。
賃貸借契約書に更新料の条項がある場合でも、23年最判によれば、
「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」有効である
とされています。
即ち、たとえ更新料条項があっても、それが「一義的かつ具体的」ではない条項であれば、更新料を支払う必要はないということになります。
実際の訴訟実務では、消費者契約法が適用されるか否かという問題として議論されています。
みなさんも、自分の賃貸借契約書をよく見返してみましょう!
3 上に書いた具体例のように「たった数か月しか住まないのに、更新料を支払うことが納得できない」という場合に、支払拒絶、返還請求、減額請求、月割り請求はできないのでしょうか?
賃貸借契約書の更新料条項が「一義的かつ具体的」であれば、原則として、支払拒絶や返還請求はできません。
相談のケースのように借家(賃貸マンションや賃貸アパートなど)の場合は、「新賃料の1か月分」と決められていることが多いので、「一義的かつ具体的」であると判断されて、支払義務が発生することになるものと覚悟しておいた方がよいでしょうね。
不動産実務の現場では、「更新料はあくまでも更新することについての手数料だから、減額も月割りもできない。」とする不動産会社が多いようです。
この不動産会社の見解では、更新後1日でも居住していれば更新料を満額請求されることになりそうですが、それでは、あまりにも杓子定規で賃借人にとって酷に過ぎます。
相談のケースのように、「更新した月の数か月後に引っ越しを予定している。たった数か月しか住まない」というような場合にも、満額の更新料を支払わなければならないというのは、問題ありと考えます。
そこで、理論構成としては、上記のとおり、更新料の性質として「賃料の補充ないし前払」の性質がある点をとらえて、「更新後に居住する数か月分だけの賃料前払いだけ認めて、その後の残月数分(賃貸期間が2年(24か月)だとすれば、24か月から数か月を引いた月数分)は減額する」ように要求して交渉してみても良いかもしれませんね。
裁判所が認めるか否かはやってみなければわかりませんが、賃貸人は争うことが予想されますので、専門家に相談するなどして適切に対処しましょう。
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